話の筋立て自体は、ほぼ原作どおりになっていたため、あまり特筆すべき部分はない。
原作での、ともすれば冗長になりがちな説明台詞をうまく簡略化して、25分の中に収めるという処理の仕方は、1話の頃と比較しても格段にうまくなっている。
今回の話では、漫画家「水木しげる」が鬼太郎やねずみ男に出会うシーンから始まると言う、ある種のメタフィクション的な話にもなっているのだが、さすがに水木家関連についてはあまり深く掘り下げることが出来なかったのか、水木本人の個性については触れられることはほぼなかった。
せめて「まるでアルキメデスのような人だなア」というセリフくらいはあったほうが良かったかな。個人的には冒頭、喫茶店に行く前の女房とのやり取りがあれば、そこだけで水木家の面々の個性を見せることが出来たのではないかと思うのだけど。
一方の鬼太郎は原作以上にカロリーヌへの思慕の深さを見せており、この辺は初期編での寝子に対する鬼太郎の接し方が、原作以上に親密であったことと同様の解釈がなされているのだろう。
カロリーヌ自身も原作どおり、敵役であるガモツ博士の娘でありながら、敵でも味方でもない、第三者的立場を維持していたのが良かった。さすがにここで変なロマンスでも盛り込まれたりしたら、たまったものではなかった。
他にもねずみ男の学歴に関する話や、オリンピックに関する話題、「人だまプロパン」「お化けタイムス」などの小ネタもきちんと盛り込まれていたのが嬉しかったね。
興味深かったのが、ブリガドーンにすっかり覆われてしまった水木家近辺の様子か。
まさに「白昼夢」と言う感じの、夢とも現実ともつかない不可思議な空間が丹念に描かれており、この辺は「その世界」の持つ空気感を大事にしてきた演出・佐藤順一氏の手腕に拠るところが大きいかもしれない。
それに絡んで登場したチンポ様…ではなく今回はトムポ様だったが、この人も原作どおりに「お前何しに来たんだよ」を地で行く登場っぷりだったので、これまた満足。
演じた京極夏彦氏の演技も、チベットの高僧らしく?重々しい声を出して演じており、4期ゲゲゲの鬼太郎での「一刻堂」とはまた違う演技を見せてくれた。
原作どおりの終わり方をしてくれたのも良かったが、個人的にはこのラストの部分だけは、マガジン版の「朧車」の方が出来がいいように思えるので、ちょっと微妙な気がしないでもない。
次回は最終回。「怪奇オリンピック・アホな男」が題材だが、実際のオリンピックイヤーにこの話が放送されると言うのも、何とも不思議な因縁ではあるね。