長編が終わり、短編形式になってきた貸本時代の作品の中では一番好きな作品である。
今回の話は、とある人間が所有している話に「勝手に」鬼太郎が住み着き、人間たちが家を取り戻そうと色々やってみるものの、最終的には鬼太郎によって、1人残らず命を奪われると言う、ある意味尤も不条理な話である。
人間たちにしてみれば、自分の家を取り戻すというだけであり、悪いところはまったくないと言っていい。
むしろいくら理由があったとは言え、勝手に住み着いている鬼太郎の方に非があるのは明らかなのだ。
にもかかわらず、人間たちをすべて殺してしまっているあたり、この時期の鬼太郎の考え方・行動理念と言うものがある程度理解できる。
鬼太郎はねずみ男とは別ベクトルで「自由」に生きているのだろう。だからこそある時は少女への想いで身を焦がすこともあれば、ある時は育ての親的存在が地獄へ落ちても助けようともしない。
あとは見た目からしてもこの時期の鬼太郎は幼児(小学一年生として学校に行ってたんだっけかな)だから、そのあたりの無邪気さ故の残酷姓を持っていたのかもしれない。
何よりある日突然現れた異形のものに、自分の世界を完膚なきまでに打ち砕かれてしまうという展開は、最初期の「幽霊一家」に近いものがあり、そういう意味では「墓場」の世界観に一番マッチした話とも言えるだろう。
今話ではねずみ男の立場も「ゲゲゲ」版に近いものとなっていたが、それでもやたら知性的・理知的な部分を強調してくるあたりが、「墓場」のねずみ男らしい部分と言えるかもしれない。
あとはやはり「ハヒフヘホ」をきちんと再現してくれたのが嬉しかったかな(笑)。