今回はニセ鬼太郎メインと言うことで、前話で省略されてしまっていた様々なシーンが、回想という形で描かれていた。
だがそのシーンを含めて見ても、今話と前話とで描きたかったのは、鬼太郎と寝子との関係性だったのだろうと改めて思う。
原作ではねずみ男に殴られた鬼太郎が、それをきっかけにして寝子の死という重い現実をあっさりと振り切ってしまうわけだが、今回のアニメ版ではねずみ男に殴られたり、すっかり反省?したニセ鬼太郎の態度を見ても寝子を忘れることが出来ず、自ら地獄に赴いてまで寝子を連れ戻そうとする、いじらしさを見せていた。
さらに寝子が死んだことで絶望する鬼太郎の描写を、ともするとくどいと受け取られかねないほどに丹念に描き、それによって鬼太郎の無念さと寝子への想いを原作以上に見せ付けることに成功している。
だからこそ、「猫娘である以上、人間の世界では暮らせない」と考え、生き返るチャンスをニセ鬼太郎に託す寝子の姿がより崇高なものとなり、同時に「そこに存在している」にもかかわらず、鬼太郎と二度と触れ合うことが出来ないという悲しさも描出されていた。
ラストの鬼太郎と寝子の間にあったものが、家の扉と言う極めて薄く脆そうなものであった点も象徴的である。
反面、ニセ鬼太郎とねずみ男の描写は、原作と比較すると割を食ってしまった面は否めない。
それでも話の展開上、最低限必要とされる描写は、なかなかテンポ良く盛り込まれていたと思う。
ステージ裏でのやり取りは声優さんの演技もあって、いかにも「水木作品」らしい場面に仕上がっていたのではないだろうか。
プロデューサーやスポンサー、「ザ・パンティ」など、原作に出てきた諸要素をさりげなく織り込んでいたのはさすがだった。
あと個人的には、変に改変されてしまうのではないかと危惧していた「黄金の排出」ネタが、ほぼ原作どおりに描かれていたのが嬉しかったね。
次回は「水神様」。
このあたりから原作も、良くも悪くも何でもありな展開になってくるので、序盤の怪奇色を前面に押し出した演出になれた原作未読ファンは面食らってしまうかもしれないな(笑)。