主水シリーズの前作である新仕置に比べると、全体的に落ち着いた雰囲気になっているのが特徴だろう。内容自体はバラエティ的要素をむしろ積極的に盛り込もうとしているのだが、にもかかわらず落ち着いた雰囲気を醸し出しているのは、ひとえに出演陣の力によるものが大きい。メンバーのほぼ全員が中年の域に達している年齢の人たちだからねえ。一番若いのが正八だけだから、そりゃ落ち着いた雰囲気にもなる。逆に多少荒唐無稽な話になっても、その俳優陣の存在感のおかげで見られたものになっている、という側面もある。作品全体にそういう雰囲気が浸透しているからこそ、演歌チャンチャカチャンのシーンでも失笑することなく見られるんだろう(笑)。
1話の主水対おせい・新次のシーンも、久々に興奮させられた。元々主水出演シリーズの1話は、裏稼業で実績を積んできた主水と、それまでまったく別の道を歩んできた他の仕置人とが出会い、仲間になるまでを描くのがメインだが、非主水シリーズのように厳格な元締が存在しない以上、主水は自分で相手の力量を量らないといけない。だからこその激突が存在するわけだ。仕留人での糸井、仕置屋での市松、仕業人での剣之介と、主水は仲間となる人物とそれぞれ一度対決してきた。(商売人までの時点で)勝負をしなかったのは旧・新仕置の時くらいだ。仕事人以降は主水自身が元締的存在になってしまうため、主水自身の緊迫した構図は、これが最後になるのではなかろうか。時間にしてみると短いものの、大変楽しめる瞬間だと思う。
今まで見たところでは6話が面白かったなあ。まあ必殺的に面白いということは、話的にはかなり重い内容なんで、見てると疲れてしまうという面もあるのだが、そういった重さを吹き飛ばすかのようなラストの仕置は、かなり意外だったな。画面3分割でそれぞれの仕置を同時に見せるなんて、アニメ的な構図を大胆に取り入れるとは、スタッフのチャレンジ精神恐るべし。
一人一殺が基本の必殺においてこういう演出は逆にイレギュラーなんだけども、それが返って不思議な妙味を出してくれるのだから、なんとも面白いものだ。
最後の最後、生まれてくる子供のためのオムツを手に取ると、直前に人を殺してきたことを思い出し、思わずオムツを手放してしまう主水の姿でしめるクロージングも、商売人という作品を代表する名シーンになっているだろう。
この話に限らず商売人は殺陣がかなり激しい。役者の顔ぶれだけ見て地味だと考えるのははっきり言って間違いだ。やっぱ仕置は派手じゃないとね。
現在は高校野球の関係で放送が止まっているけども、再開したらまたじっくりと見ることにしよう。最終回まで見ていられるかどうかは微妙だが…。