2019年02月14日

ゲゲゲの鬼太郎(第6期)38話「新春食人奇譚 火車」感想

 第3クール全般に渡って展開された西洋妖怪編も、バックベアードの退場とアニエス・アデル姉妹の旅立ちを象徴として無事に幕を閉じた。年が明けての第4クールからはいつもの1話完結形式に戻る一方で公式的には「名無し最終決戦編」とも銘打っており、名実ともに今期鬼太郎の縦糸として話を引っ張ってきた名無しとの決着がつく重要な期を迎えたわけである。
 今の段階では2年目の放送があるかどうかはわからないが(京極先生の発言はあったようだけど)、どちらにせよやはり名無しとの決着は放送1年目のラストを飾るこの第4クール期でつけなければならないのだろう。
 まなの体に刻印された印は今のところ3つ。名無しの目的もまなを標的にした理由もその実力さえもほぼ不明なままではあるが、どのような展開と決着を見せるのか今から非常に楽しみである。

 それはそれとして第4クール初回である。…しっかし年明け早々にえらく物騒なサブタイトルを持ってきたなあ(笑)。
 今回の登場妖怪は火車。葬式や葬列中の人間の死体を盗んでいく悪どい妖怪だが、原作では「皮を残して内臓を取る」とまで言われるほどの強豪であり、実際鬼太郎は魂入れ替わりの術を食らってあっさり破れてしまっている。歴代アニメでは原作に準拠した2期や3期に反して涙もろい人情家として作られた4期、妖怪四十七士の1人(つまり鬼太郎の味方)になる5期など、なかなか多様なキャラ造形が行われているが、今回はとぼけた雰囲気を見せつつも比較的原作に準拠した悪辣な妖怪として描写されていた。
 最初は死体を食っていないために妖力も乏しくまなに見つかって逃げてしまうような情けない姿をさらしていたが、これは原作にあった「昔の元気はねえよ」というセリフを発展させた設定と言え、久々にねずみ男が火車を巻き込んで単独で金もうけに走る様も、原作で印象的だった「困っている人間から金を稼ぐのが一番簡単な儲け方」という小狡いセリフや態度の今期風焼き直しと考えると、なかなか巧いこと原作をアレンジしていると言える。
 さらに直接的な表現こそないものの火車が物理的に人間の死体を「食う」という原作にはない、ある意味原作以上とも言える描写を加えたことで、最初は少しとぼけた感じのしていた火車が本来的には図々しく悪辣な存在であることを短い時間で十分に見せていた。妖力がある程度戻ってからの魂入れ替わりの術を駆使してのねずみ男→ねこ娘→鬼太郎の変化は、それぞれの担当声優の熱演もあって非常に聴きごたえがあり、鬼太郎in火車とねこ娘in鬼太郎のバトルという珍しい対戦カードも実現しており、視覚的にも面白いシチュエーションに仕上がっていたと思う(入れ替えられた鬼太郎たちにしてみればたまったものではないだろうが)。
 そして実に3期以来に披露された目玉親父の大技「逆モチ殺し」。近年はどちらかと言うとマスコット的な扱いが(特に画面外で)多く見られるようになってきた目玉親父もれっきとした実力者であり、鬼太郎のピンチを救えるだけの力を持っているということを久々に画面の中で見せつけてくれた。火車がかなり好き勝手やって鬼太郎たちを追い詰めていただけに、見た目のグロさにかかわらず物語的なカタルシス・高揚感まで覚えさせてくれるのも物語運びの妙であろう。

 ただ個人的にはラストのオチは、今回に限っては少々やりすぎだったようにも思う。元々死体を手に入れる手段として「死体があることを世間的に知られたくない」後ろめたさを持つ人間たちから回収するというねずみ男のやり口はいかにも6期らしい風刺が利いていたし、その延長線上としてのオチなのだとは思うのだけど、あそこまでの悪辣さを発揮し目玉親父という一種切り札的存在に倒されるという展開を受けながらのうのうと逃れ落ちてしまうというのは、ちょっと演出の嗜好的に風刺に偏りすぎてはいなかったろうか。
 まあ原作のクロージングは火車が目を回して降参というあまり見栄えのするものではなかったから、それをそのままアニメ化するというのもそれはそれでどうかとは思うけど、ゲゲゲの鬼太郎という作品はエスプリやアイロニーの利いた娯楽作品なのだから、そのあたりの匙加減は慎重にやってほしいなあと思う次第である。
 オチのせいで今話全体の完成度が深刻な影響を受けるとかそういうことでも全然ないのだけど。

 次回は雪女。直近で雪女と言ったら5期の葵ちゃんを思い浮かべてしまうところだけど、スタッフ談話によるとラブコメ話になるようで久々に笑い重視の話となるのだろうか。
posted by 銀河満月 at 16:37| Comment(0) | ゲゲゲの鬼太郎(第6期)感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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