2006年02月18日

アニメ「旧ドラえもん」鑑賞記

 以前はとりあえずごまかして書いてみたのだけども、こことかここで書いてしまっているようなので、僕も調子に乗って書いてみようと思う。

 2月6日の戯言で、ネオユートピアの上映会へ行ってきたと書いたのだけど、その上映内容については具体的に触れなかった。
 それはまあ、今では再放送すら難しいような作品があったのも確かなのだけど、一番の理由は、「あの」作品を上映したと言う事実を、そんな簡単に公にしていいのかという思いが捨て切れなかったのだ。
 しかしネオユーのサイトでも真佐美ジュン氏のことに触れているし、上記のブログでも触れているわけだから、ネタ晴らししてもいいだろうと判断した。

 僕が2月5日、ネオユーの上映会で見てきたもの、それは数ある藤子アニメの中でも特に幻と謳われている、日本テレビ版「ドラえもん」だったのだ。
 当時の製作会社もなく、フィルムも散逸してしまい、今や視聴は二度と叶わないとまで言われていた作品を、この目で見ることが出来たのである。
 これはちょっとした奇跡と言ってもいいかもしれない。その奇跡の瞬間に僕は立ち会えたのだ。

 上映されたのはOP、EDと「男は力で勝負するの巻」、「潜水艦で海に行こうの巻」の2本。前者は富田耕生版、後者が野沢雅子版の作品であり、それぞれのバージョンを比較してみることも出来たのだ。
 さすがにこの作品については書きたいことが山ほどあるので、1つずつ書いていってみようと思う。

・OP
 僕はこの上映会で初めてOPも見たのだが、正直これでは人気が出なかったのも止むなしかと思えてしまった。
 当日は他に「ジャングル黒べえ」や「新オバケのQ太郎」も上映されたのだけど、その2作品のOPと比べると、曲・映像共に明らかにパワーが足りない。黒べえも新オバQも、イントロがかかった瞬間、画面に引き込まれるようなパワフルさを持っているが、残念ながら旧ドラにはその力強さが感じられなかった。

・「男は力で勝負するの巻」
 「ソノウソホント」が原作のアニメ。
 なんと言っても僕の人生で初めて見る旧ドラなのだからと、真剣に見入った。
 オープニングは原作どおり、空地で言い争っているのび太達のシーンから始まり、そこにやってきたドラえもんが声をかける…。

どこをどう聞いても富田耕生の声だ

 いや、話に聞いた限りでは、もう少し高めの声を想像していたのだけど、ホントそのまんま富田氏の声だったので、はっきり言って仰天してしまった。
 会場も富田ドラの一声が響いた瞬間、爆笑の渦が巻き起こっていた。僕は「えーっ!?えーっ!?」をひたすら連発してた(笑)。いや、それくらいインパクトがあったんだって。
 確かに僕達は大山のぶ代の声に慣れ親しんでいるとは言え、あの富田声はインパクトがありすぎた。

 話の大筋は原作どおりなのだが、力比べ合戦にスネ夫も混じっており、さらにスネ夫のパパが割れなかった板切れを、スネ夫のママ(空手三段という設定)が豪快に割ってしまうという、オリジナルシーンが挿入されていた。
 終盤に出てきたジャイアンの父ちゃんは原作とはまったく異なり、ジャイアンそっくりであるもののジャイアンよりずっと小さく、見た目だとジャイアンの弟のような容姿になっていた。
 その父ちゃんが何とか土管(アニメではスネ夫が板切れ、のび太が大きな石、ジャイアンが土管をそれぞれ親に割らせようとする)を割ろうとするが、当然割れるはずもない。しかし父ちゃんは可愛い息子を嘘つきにしないため、両手を腫れ上がらせながらも懸命に土管を叩き続ける。そこでようやくソノウソホントを見つけたドラが父ちゃんに土管を割らせ、親子喜びながら抱き合う、というのがクライマックスの流れになっていた。
 このあたりはよくある「下町人情」的な話作りになっていて、なかなか好感が持てた。原作と比較するとかなり大胆なアレンジだが、旧ドラの世界観で考えると、それほど破綻はしていない展開だろう。今のアニメドラでスネ夫のママをあんなふうに活躍させることは出来ないからね。
 あと一つ興味深かったのは、ドラがソノウソホントをポケットのどこにしまったかわからなくなってしまい、必死にポケットをあさるシーンがあったこと。ファンなら周知の通り、ドラは慌てると希望通りの道具をすぐに出せなくなってしまうのだが、このアニメの放送年は1973年。まだこの頃はその設定はかっちり出来上がってはいなかった。もしかしたら上記の設定は、この旧ドラから逆輸入したのかもしれない、などと考えたりもした。

・「潜水艦で海に行こうの巻」
 こちらは野沢雅子版。雰囲気としては、怪物くんのように高い声域で、怪物くんとは違ってハキハキとした喋り方をしている、という感じか。
 こちらの話での一番のサプライズは、しずかの家にガチャ子が居候していたこと。しかもドラと口げんかする程度で、あまり進行上の役に立っていない(笑)。
 話自体は海に行くところまでは原作どおりだが、それからは完全にオリジナル展開。交通渋滞で海岸にたどり着けないスネ夫達を尻目に、のびドラが潜水艦をモーターボートのように使って遊んだり、そんな風に張り合ううちに、全員無人島に打ち上げられてしまい、脱出のために出した「タイムトンネル」が実際は単なるワープトンネルで、のび太の家に繋がってしまったりと、何と言うか無茶苦茶な展開。
 これは前半の「男は〜」と比較すると、旧ドラという作品のダメな部分が露出してしまっているように見える。強引にドタバタギャグの世界に持ち込もうとして、逆に失敗してしまっている感じだ。

・ED
 映像は全部止め絵。歌詞のぶっ飛び具合は今更驚くことではないのだが、今考えると歌詞はともかくあのノリはOP向きだったかもしれない。

 と、とりあえず作品を見た感想はこんな感じ。
 あと個人的ににやりとした点は、スネ夫がジャイアンよりも目立っており、のび太をいじめる中心人物がスネ夫になっていた点かな。これは原作最初期の人物設定に通じるものがあり、旧ドラが原作最初期の作品を参考に、キャラの性格設定が決められたことを思わせる。
 ただ肝付兼太声のジャイアンは、やはり違和感があったなあ。
 作画はいかにも70年代ギャグアニメという感じの作風だったが、「潜水艦で〜」の方は雑に見える部分も少なからずあった。

 ともあれ、一生見ることはないと思っていた旧ドラを、遂に見ることが出来た。僕はそのことを素直に喜びたい。正直万人にお勧めできる内容ではないと思うし、全話視聴なんてそれこそ夢のまた夢だろうけども、それはそれとして、今は真佐美ジュン氏を始めとした、今回の上映実現に尽力された方々にお礼を申し上げたい。

 ちなみにその後の飲み会では真佐美ジュン氏の近くに座れたこともあって、真佐美氏が持ってきていた旧ドラの設定資料も拝見することが出来た。これまた感謝感激である。
posted by 銀河満月 at 01:45| Comment(0) | TrackBack(2) | ドラえもん・藤子関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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