2011年08月28日

アニメ版アイドルマスター8話「しあわせへの回り道」感想

 テレビアニメを作る時のエピソード形式には色々なものがある。最終回まで長大な1つの流れの中を突っ走っていく大河ドラマ形式、エピソードを数話にまたがって描く連作形式、短い挿話を1つの話の中にまとめたオムニバス形式、1話完結を基調としたアンソロジー形式などだ。
 アニメ版アイドルマスターは、それらの中ではアンソロジー形式の作りに近い。登場人物は毎回同じだし、「トップアイドルを目指す」という縦糸軸が存在しているため、1話1話の内容が完全に独立しているというわけではないが、基本的に1つの話はその話の中で完結している。
 そういう形式の作品の場合、比較的自由に各話の内容を演出することができる。簡単に言えばある回ではシリアス、ある回ではコメディタッチ、またある回ではまったり、という具合だ。
 もちろん作品世界を大きく逸脱するような展開や演出は許されないが、逆を言えば作品世界の根幹を塗り替えるほどのものでもない限りは、演出や表現にかなりの自由を利かせられるということでもある。そうすることで世界観やキャラクター設定などの幅をより広げることができるのだ。
 それを考えるとアニマスは初回からいきなりドキュメンタリータッチ(モキュメンタリー)の表現手法を用いており、続く2話と3話ではコメディタッチ、4話ではシリアスと各話ごとの表現や演出、見せ方を頻繁に変更し、アンソロジー形式ドラマの利点を最大限に生かしていることがわかる。
 各話ごとに見せ方を変えてきたアニマス制作陣が今回の第8話に用意した演出。それは一見すればすぐにわかるとおり、「ギャグ」であった。

 と言っても今話の始まりは至極穏やかなものだ。結婚雑誌のモデルの仕事ということで、あずささんはウェディングドレスを着こんで撮影に臨み、そんな彼女を同じく参加している美希と真が、それぞれミニウェディング(ゲーム版「ライブフォーユー!」でのDLCでもある)とタキシード(こちらもゲーム版に「ポーリータキシード」というDLC衣装がある)を着ながら見つめている。

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 女の子らしさに憧れながらも、「男役」としてタキシードを切る羽目になったためにがっかりする真、それをなだめるプロデューサーと真のカッコ良さを素直に褒める美希、そんな3人のやり取りを尻目に優しい微笑みを振りまきながら撮影を進めていくあずささんと言った、落ち着いた雰囲気の中で緩やかに各人の様子が描かれる。
 休憩時間でのあずささんとPのやり取りや、親友である友美へのメール送信やその後の電話でのやり取りも、これから起きるドタバタ劇などまったく思わせないのんびりさだ。無論そういう空気を構成している大きな要因として、あずささん本人ののんびりゆったりとしたセリフや佇まいが影響している点は見逃せない。電話をしている最中、本人が意識しないまま式場の中をウロウロと歩いてしまい、結果として1人はぐれてしまうという展開は、「極度の方向音痴」というあずささんの大きな個性を、さり気無いながらも画的にはっきり描写していた良い場面だった。
 さてそんなのん気な流れは、あずささんが黒服男の一団に誘拐?されるという急を要する事態が勃発してからも、基本的には変わらない。
 あずささんは撮影現場で偶然ぶつかった別の花嫁姿の女性と間違われて連れ去られてしまったため、間違いと気付くや否やすぐに車から降ろされてしまう。降ろされた場所は彼女がまったく知らない場所で、方向音痴であることを差し引いても簡単には帰れそうもない。
 タクシーを捕まえて現場に戻ろうとするあずささんだったが、そんな彼女に小さなトラブルが連続して訪れる。片や道に迷ってしまったおばあさん、片や迷子になってしまった子供たち。

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 自分自身が困っている状況になりながらも、他に困っている人を放っておくことができないあずささんは、結局その人たちに付き添うことになる。
 と言ってもおばあさんの時は道案内するつもりが逆に余計に道に迷ってしまい、迷子の親も自分の力で見つけることは出来なかった。あずささんが能動的に起こした行動自体はあまり役には立たなかったわけだが、しかし最終的にトラブルは解決することになる。
 おばあさんは息子と待ち合わせていた場所の名前を勘違いして覚えており、実際にはあずささんが道に迷って辿り着いた場所こそが待ち合わせ場所だった。子供たちに豚まんをごちそうしたあずささんは、その豚まん屋でのやり取りがあったためか、親御さんを見つけることに成功する。
 基本的には偶然の結果なわけであるが、その偶然もそれぞれおばあさんや子供たちだけでは決して起こり得なかった偶然だろう。自分のことをさておいてまず困っている人のために動いてくれた人がいたからこそ、幸せな偶然が生まれたのだ。
 その小さな偶然は後半へ進むに従ってより沢山の人々と繋がっていくことになる。

 そんなあずささんの様子など露知らず、誘拐されたと思い込んでいる真とプロデューサーは、撮影現場を美希に任せてあずささんを探し始める。
 一方の黒服たちも、自分たちの主が花嫁の女性に渡していた家宝の指輪をあずささんが持っていたことに気づき、慌てて追いかけ始めるが、そうとは知らない真は彼らが未だあずささんを連れ去っているままと思いこみ、そんな彼らを逆に追い、ついには中華街を舞台に、黒服相手に大立ち回りを演じることになった。

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 梯子上での格闘シーンを始め、とても空手初段程度の腕とは思えない(笑)真のアクションは、往年の香港アクション映画を思わせるダイナミックなものになっており、あくまで自分のペースを守ったままで「仕事場へ戻る」という目的を果たそうとしているあずささんの静的な空気とは全く対照的だ。そうすることで言わば「あずささんパート」と「真たちパート」のメリハリを効かせていたであろうことは、論を持たないだろう。
 大活躍する真の一方で、中華街の店にあるものを手当たり次第に引っ張り出して暴れまわるため、プロデューサーは弁償を迫られてしまうという、何とも情けない役どころを演じる羽目になってしまった。
 だが個人的には、タクシーに乗った時に真っ先にシートベルトを締める小市民ぶりも含め、彼にはピッタリな役どころだったとも思える。彼が貧乏くじを引くからこそ、アイドルが多少の無茶もできるわけなのだから。
 そして撮影現場に1人残った美希は、6話に続いて彼女なりの「やる気」を発揮。持ち前のビジュアルイメージを存分に発揮して、写真撮影と時間稼ぎを同時に実行する。

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 6話と同様に美希の非凡さを見せつけるシーンではあるが、同時に彼女の良い意味で奔放な、悪い意味では自分勝手な段取りの付け方を描き、それに不快感を示す人間の描写を盛り込むことで、美希が未完の天才であるが故に持つ危うさをも描出しきっていた点は、大変興味深い。

 あずささんの方は相変わらず「仕事場へ戻るためにタクシーを捕まえたいからタクシー乗り場を探す」という当初の目的をそのままに、タクシー乗り場をずっと探していたのだが、そんな中にも彼女の姿が知らず知らずのうちに、多くの人に小さな幸せを運んでいく。

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 そのシーンにかかっていた楽曲「晴れ色」はアニメのために用意された新曲だが、そのゆったりとした曲調と歌詞の内容は、まさにそんなシーンに最適のものだった。大雑把に言えば「前向きになろう」という旨の内容であるが、自分の心が晴れていくことを、街が晴れ渡っていく描写と重ねているその歌詞は、他人のことを素直に案じ、他人が幸せを得た時に自らも同じように喜ぶことができるあずささんの優しい性格にぴったりマッチしている。
 あずささんの何気ない行動が街行く人々やネコ、果てはゾウやキリンまでもを笑顔にしていくという、まさに小さな幸せにあふれたシーンにふさわしい歌であったろう。
 そしてあずささんがまたまた遭遇した困っている人=街頭の易者さんは腹痛を起こしていたため、あずささんに店番を任せて立ち去ってしまう。
 と、ちょうどそこに現れる外国人の紳士。「当たらないかもしれませんが」と彼女らしい断りを入れながらも、花嫁に振られてしまったという彼の「日本の思い出になる場所へ行きたい」という願いを聞き、使い方は全くわからないものの、物は試しと筮竹を使い、「港」という答えが出る。

 易者からタクシー乗り場を教えてもらったものの、今度はタクシー待ちの行列と観覧車待ちの行列とを間違えて、観覧車に乗ってしまったあずささん。と、そんなあずささんが観覧車から見つけたのは、なくした指輪を探すために黒服を連れてあずささんを追いかけてきた花嫁姿の女性だった。観覧車を降りたものの女性を捕まえることができないため、あずささんは後を追って港に向かう。
 一方の真や黒服たちも、あずささんが港に向かったという情報を聞いて急行し、そんな真をプロデューサーが追いかけ、さらにそんな彼を真と黒服の格闘で商品を壊されてしまい、弁償を求める店の主人たちが追いかける。
 もう一方の美希たちも、美希の発案で港で撮影することになり、スタッフとともに港へ向かう。それ以外にもあずささんがここまでの道程でかかわった人たちや単なる野次馬、さらにはあずささんに元気づけられたサーカスのゾウやキリンまでもが一堂に会し、全員で港を目指して走り出す。

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 それぞれ直接的な理由は異なるものの、その遠因となった存在であるあずささんを求めて各人が爆走する姿は、まさにスラップスティックの極致であり、今話のクライマックスとも言えるシーンである。
 あくまであずささん本人は仕事場に戻ることや拾った指輪を届けるという、個人的な義務感や善意に基づいて行動しているのにもかかわらず、それが本人のあずかり知らぬところで各人が勝手に騒ぎを起こし、その帰着点としてかかわった多数の人間が同じ場所に集まっていくという流れこそがこの場面の真骨頂であり、同時に最高のギャグシーンとしての昇華を果たしている。
 それは指輪を渡された女性の前に、あずささんが占ってあげた外国人=結婚相手の石油王が現れた時も同様だ。「石油王です」の自己紹介に思わず吹いてしまった視聴者はたくさんいいたのではないだろうか。
 結婚相手がイケメンだとは知らなかった女性は、石油王からのプロポーズを二つ返事で了承してしまう。このあたりの何とも強引なハッピーエンドもまたギャグの定石であろう。

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 しかし経緯や理由はどうあれ、この2人が幸せを掴んだのは事実だし、結果的にそうなった遠因はあずささんにある。
 あずささんの特徴である「方向音痴」は、しばしば欠点としてあげられることが多い。今話においてもそもそも撮影現場で道に迷いさえしなければ、あずささん本人が知らないこととは言え、真たちが騒動を起こすことはなかったし、仕事自体も滞りなく進めることができたろう。
 しかしその時あずささんが道に迷ったおかげで、多くの人がささやかながらも確かな幸せを得ることができたのだし、2人も結婚を決めることができた。
 単なる偶然と言えばそうなのだろう。しかし自分のことよりもまず他人のことを考えて行動する思いやりと、観覧車に乗っているシーンでのあずささんの言葉「でも、すごくいい眺め」に象徴されるような、自分の欠点を自覚しながらも自然と周囲に目をやり、その中に嬉しいことや楽しいことを見つけて素直に喜ぶ優しさと穏やかさ。あずささんの持つその性格が、結果として多くの人々に幸せな偶然を運ぶことになったのだ。

 あずささんの持つ小さな善意と優しさが、様々な人に小さな幸せと笑顔を呼ぶ。そうであってほしいと思いながらもそうなることはほとんどないと言っていい現実の世界を思えば、制作陣の作った「アイドルマスター」の世界は、優しさに溢れた何と素敵な世界であることか。
 アイマス世界のあるべき姿までも、今話のあずささんの姿に集約させているのではないか。ふとそんな風にも思えてしまうのである。

 結婚雑誌の仕事は美希が機転を利かせたおかげで、港を走るあずささんの姿が掲載されて好評を博した。真たちが壊してしまった街の修理代も石油王が出してくれ、どうにか一件落着かと思いきや、あずささんには最大の問題が突きつけられてしまう。
 それは親友である友美からの「結婚の予定もないのにウェディングドレスを着ると婚期が遅れる」というメール。

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 Aパート冒頭であずささんも呟いていたが、あずささんがアイドルを目指した目的の一つに「運命の人に自分を見つけてもらう」と言うのがあるのだが、今回様々な回り道をした結果、多くの人たちに小さな幸せをプレゼントしたものの、肝心の自分の幸せは少しばかり遠のいてしまったわけだ。
 実はこれはあずささんが持つ最大の欠点でもある。今まで散々書いてきたとおり、あずささんは自分のこと以上に他人のことを思いやって行動することができる人間である。しかし逆に自分自身のためには積極的に動くことをためらってしまうのだ。
 それは前述のアイドルになった理由が「運命の人に自分を見つけてもらう」ことであって、「運命の人を自分で見つける」ではないことからも窺い知れる。
 あずささん個人の幸せが訪れるのはまだまだ先のようだが、同時に今話では「運命の人に見つけてもらった花嫁」、つまり自分が夢に描いている姿を目の当たりにもしたわけで、それがあずささん本人にとっても救いになっているという構図になっていた。
 あずささんの夢を現実とオーバーラップさせることで補強させながらも、あずささん自身の欠点を持ち出して、幸せにたどり着くにはまだまだ回り道が必要であることを描写する。
 彼女の結婚願望を現実のものにしたかのようなアバンでの撮影風景からエンドロール、そしてこれまた新曲のEDテーマ「ハニカミ!ファーストバイト」に至るまで、すべてが「三浦あずさ」という1人の女性のために作られた話であった。

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 実はこういう作りはアニマスの中では初めてのことであり、その点からもあずささんの魅力がより強調された挿話となっていたことだろう。
 個人的にこのED映像の、「結婚」に対してまさに少女のような憧れを抱いているあずささんの表情が大好きだ。765プロアイドル最年長の女性にして、思春期の少女のような一面も秘めている多面的な女性。このワンシーンだけでもあずささんの可愛らしさが十分に伝わるのではないだろうか。

 今話はギャグの中にもあずささんの魅力をふんだんに散りばめた珠玉の一作となった。
 ゲーム版ではあずささんの物語は基本的に「運命の人」絡みの話に終始してしまうため、一対一の関係性のみで成り立っているゲームとは違い、765プロ全体を俯瞰して見ているアニメ版では、どうしても描くのに難点があったわけだが、今話ではその運命の人関連のネタも少しだけ盛り込みながら、あずささんの魅力を描くことにひたすら注力している。
 そして基本はギャグの構成でありながらも、各人にあからさまなギャグ用のネタを用いさせず、シチュエーションギャグに徹することで、それぞれのキャラ、特に毎回登場するレギュラーキャラクターの性格設定に破綻や矛盾が生じないように工夫している、その見せ方には素直に舌を巻く。
 その一方で、穏やかな雰囲気のAパートの時点でスラップスティック的なギャグ(あずささんが人違いと気付いた黒服が驚くシーンで、自動車のステアリングが思いっきり外れてしまっている)をさりげなく盛り込み、今話が「ギャグ」であることを示しているところには驚かされた。

 さて次回。

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 双子のアイドル・双海亜美と真美の話になるようだ。ずっと一緒に活動してきた2人も、亜美が竜宮小町の一員になったことで、それぞれ別の活動をすることになっているわけだが、そのあたりに突っ込んだ話になるのか、それとも2人の個性を最大限に生かした賑やかな話になるのか。
 今話を見てもわかるとおり、もうアニマスは毎回どんな形式で描いてくるかわからないから、そこからしてワクワクしてしまうね(実際今話がこうまでスラップスティックな展開になると思っていた人がどれほどいるだろうか?)。
 そして何よりも亜美真美が可愛い!可愛い中にもちょっと凛々しい表情を見せたりして、2人の様々な表情を楽しむことができそうですな。
posted by 銀河満月 at 01:46| Comment(1) | TrackBack(14) | アニメ版アイドルマスター感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月20日

アニメ版アイドルマスター7話「大好きなもの、大切なもの」感想

 むかーしウルトラマングレートがデビューした時、「もし神がいるとしたら、こんな姿をしているのかもしれない」みたいな仰々しいキャッチコピーが使われたことがあったけど、今回のアニマスを見て「もし天使がいるとしたら、こんな笑顔をしてるのかもしれない」と素直に思ってしまった。

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ほら、天使でしょう?


 と、そんなわけで今回はやよいメインのお話である。
 やよいは家が大所帯なので厳しい家計を支えるためにアイドルを目指したという、なかなかシビアな設定を持っているものの、そんな様子はおくびにも見せず毎日を元気いっぱいに生きている明るい女の子。冒頭で紹介された伊織の家を見て、それが伊織の家だとは最初は思えず、事実を知ってから真っ先に浮かんだ感想は「掃除が大変そう」という、庶民的な女の子である。
 そんな彼女に用意された物語は、やはり「家族」の物語だった。

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 アバンでの強引なテレビ番組出演が失敗した伊織は、響とともに自分の家族に対する不満を口にする。
 給湯室でおしゃべりをしている3人の中ではやよいが最年少であるものの、それぞれの家族の中では、兄を持つ伊織と響は年下の「妹」であり、6人兄弟の長女であるやよいが年上の「姉」である。
 兄弟がいる者同士でありながら兄弟間での立場が異なる3人のやり取りは、伊織と響があくまで妹目線であるのに対し、やよいが姉目線になっており、「兄弟」そのものについての見方について微妙な差異が生じている。
 そしてこの辺もまた後々の伏線になっていたりするのだ。

 やよいの家で食事をもらうことになった一同は、帰り際に大量のもやしを始め材料を買い込んだ後、やよい宅を訪問する伊織と響。
 「(飼い犬の)ジャンバルジャンの家より小さい」と伊織が感想を漏らしたやよい宅で彼女らを出迎えたのは、やよいの妹や弟たち。やよいが「もやし祭り」の準備をしている間、伊織と響は下の兄弟全員の遊び相手を引き受ける。

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 伊織も響も兄弟の中では一番下であり、姉的役割を持って子供の面倒をみる機会はほとんどなかったであろうから、一緒に遊びながらも次第に疲れてきてしまう。その一方でやよいは料理を作る傍らで洗濯物を取り込んだり、うまくトイレに行けない浩司の面倒を見たり、最年少である浩三のミルクを用意したりと、様々な用事をすべて1人でこなしていく。
 ここはしっかり者であるやよいの面目躍如と言ったところだが、同時にBGMの「キラメキラリ」に合わせて伊織と響がダンスを披露するシーンがあったりと、見所が多い。
 もちろんやよいの兄弟が初めて明確なビジュアルを持って登場してきたこともポイントが高い。かつてのプラチナアルバムやドラマCDなどで断片的に登場したことはあったものの、実質今回が本格デビュー?と言ってもいいのではないだろうか。
 年齢相応に遊びたい盛りの弟や妹であるが、唯一長介だけは少しずつでもとやよいの手伝いをする。彼もやよいの弟ではあるが同時に長男、つまり男兄弟の中では最年長であるだけに、姉を手助けしたいという思いが強かったのだろう。

 しかしその思い故にBパートではやよいとすれ違うことになってしまった。
 もやし祭りを楽しんでいた面々だったが、伊織と響が来て手伝ってくれたことを素直に喜ぶやよいの言葉を聞いて、長介は複雑な思いを抱き、さらに些細なことから浩司を泣かせてしまう。
 そしてやよいの「お兄ちゃんなんだからみんなに優しくしなさい」という言葉を聞いた長介は、売り言葉に買い言葉で「自分ばっかり好きなアイドルやってるくせに」と言い残し、家を飛び出してしまった。
 飛び出していった長介を心配しながらも、今は自分が家族の最年長者=しっかりしなければいけない立場であることを自覚しているやよいは、その不安な気持ちを弟たちにも、友達である伊織や響にも吐露しない。
 このやよいが持つある種の頑なさは、長介の言葉にショックを受けたとやよいが述べるまで、やよいの表情が画面に一切映されないという演出面からも表現されており、制作陣のやよいというキャラクターへの理解度の高さを感じさせる。
 伊織からあの言葉が長介の本心ではないことを聞かされたやよいは、響に後押しされて響とともに弟を探しに出る。6話もそうだったが響は最後の一押しをする役割を担うことが結構あるようだ。
 その一方で伊織はAパート冒頭でプロデューサーから受けた言葉を思い返していた。

 仕事に失敗してしまった伊織に注意するプロデューサーに対し、プロデューサーは竜宮小町に所属している自分とは関係ないと言い返す伊織。
 しかしプロデューサーはその言葉に引き下がることなく、静かにはっきりと「困ったことがあったら相談にも乗りたい。俺はみんなのプロデューサーのつもりだ」と告げる。
 そのまっすぐに向けられた気持ちを、その場ではかわしてしまったものの、その時のプロデューサーの言葉と様子は、伊織の心のどこかに残っていたのだろうか。伊織はプロデューサーと連絡を取るが、この時誰が聞いているわけでもないのに「一応」と断りを入れるあたりが、いかにも伊織らしい。
 やよい達は長介を見つけられず、やよいは不安な気持ちがあふれ出して涙を浮かべてしまうが、そこへ報を受けたプロデューサーが駆けつけてくる。
 結論から先に書いてしまえば、長介を見つける際にプロデューサーは能動的に活躍したわけではない。伊織との電話の中で伊織と何気ない会話をし、それをヒントに伊織が長介の居場所を見つけたわけで、プロデューサーが直接動いても事態は好転しなかったのだ。
 ではここでプロデューサーを登場させたのはなぜだろう。
 僕としてはこの場、この状況でやよいとプロデューサーを会わせることが最大の目的だったように思える。
 長介を心配するあまり涙ぐんでしまったやよいを前に、目の前にいた響は何もすることができなかった。恐らくその場に伊織がいたとしても、声をかけることはできたかもしれないが、やよいの不安を払拭することはできなかっただろう。
 だからこそのプロデューサーである。ゲーム版をプレイしている方にしかわからないことで恐縮だが、やよいは6人兄弟の最年長として家事を切り盛りする一方で、自分も年上の人間に甘えてみたいというかすかな願望を持っている。それは「1」にして13歳、「2」でも14歳に過ぎない少女にしてみれば当然の願いだろう。
 だがもちろん兄弟の前でそんな気持ちを出すはずがない。長いこと一緒にアイドルとして過ごしてきた仲間たちの前でも、むしろ仲間だからこそ出そうとは思わない。そんな彼女にとってはプロデューサーは、今まで彼女が築いてきたどの人間関係とも異なる関係にある存在と言える。
 無論今の時点ではプロデューサーに「甘える」などという発想は湧いていないだろう。だがやよいは仕事とは全く関係のない、家族間のトラブルで心配事を抱えてしまったにも関わらず、プロデューサーはそれを承知の上で、純粋にやよいとやよいの弟を案じて駆けつけてくれた。その仕事上の関係を超えた真摯な態度がどれほどやよいを安心させたことか、それはプロデューサーの励ましでようやく笑顔を取り戻したやよいの姿に集約されているのではないだろうか。
 この役目は他の誰でもない、プロデューサーにしかできなかったことであろう。

 さて肝心の長介は、自宅の物置に1人隠れていた。突発的に飛び出しては見たものの、根本的に家族が大好きな人間というものは、得てして遠くには行かずにこのような場所に隠れるものである。
 伊織はプロデューサーとの会話の中でそれに気づくわけだが、当初「庶民の感覚なんてわかるわけない」と言っていた伊織ではあるものの、実際にはかつて兄とケンカした時の伊織と同じ発想で長介は物置に隠れていたわけで、庶民も金持ちも関係なく、「兄や姉」とケンカした「弟や妹」の取る行動は似通ったものになるというところだろうか。
 長介のわだかまりはやよいが自分を頼りにしてくれないから、というところに起因していた。いくら頑張っても弟だからと姉から頼られることなく、かと言って失敗したら「みんなのお兄ちゃんなんだから」と叱られる。彼にしてみればまさにどっちつかずの中途半端な扱われ方で、納得できるものではないだろう。
 しかし伊織はそんな長介を甘やかすことなく叱咤する。やよいに認めてほしいなら全力でぶつかっていけ、胸張って前を見ろ、と。
 正直な話、落ち込んでる子供に対して少し厳しすぎな感じがしないでもないお説教(笑)だが、それは立場的には長介も伊織と同じ弟妹であり、且つ伊織が友人としてのやよいを見続けてきたこと、そして弟を心底案じる姉としてのやよいを見たからこその、厳しめのアドバイスだったのだろう。
 そして戻ってきたやよいは長介を叱ることもなく、ただ無事だったことを喜んで抱きしめる。姉であるやよいが弟に対して真っ先に取った行動。目に涙を浮かべていた伊織と響も、そんな「姉」の姿に妹として感じ入るものがあったのではないだろうか。帰宅時にそれぞれの兄へ思いを馳せていたあたりからも、それは窺い知れる。

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 帰り際、自分を頼ってくれた伊織に感謝の言葉を伝えるプロデューサーだったが、もちろん伊織は素直に返答するようなことはしない。
 実際表面的にはプロデューサーはほとんど役に立っていなかったわけであるが、勤務時間はとっくに終わっている時間帯、恐らくは事務所を退社していたろうし、もしかしたら何か別の仕事をしていたのかもしれない。しかしそんな事情を捨て置いて真っ先にやよいの元へ駆けつけてくれたプロデューサーに、以前より強い信頼感を抱いたのも確かだろう。最後の伊織の言葉はそんな胸中を伊織なりに表現した良い言葉だった。

 今話はアイドル活動自体はほとんど行っていない、ゲーム版で言うところの休日コミュやアフターコミュに相当する内容の話になっていた。
 「トップアイドルを目指す」という話の縦糸的部分はまったく進展していないため、それを残念と思う向きもあろうが、やはり高槻やよいという女の子の精神的バックボーンを見せる上では、必要な話でもあったろう。小さなケンカはあるけども、家族のことが大好きで、家族のことをいつも大切に思っているからこそ、今アイドル活動をしているやよいがいるのだから。
 やよいが長女として家族を支えるように、そう遠くない将来、やよいの弟たちが彼女のアイドル活動を支えるようになるかもしれない。そんな未来図まで想像できるような爽やかな仕上がりの好編であった。

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 細かいところに目を移すと、今回は4話に続いてアイドルたちが全員登場しない話でもあった(これも4話と同様、No Makeにて本編に登場していないアイドルたちのやり取りが聞ける)。
 そんな中、地味に響が皆勤賞を獲得している。春香も冒頭で登場こそしているものの、セリフがないので皆勤とまではいかなかった。
 その代わり中の人こと中村繪里子さんは、ハム蔵役で皆勤賞である。厳密には「you-i」として参加していたと思われる今井麻美さんも皆勤賞になるのかな。
 で、その「you-i」もそうだが、今回は妙なところで変に遊びのシーンが多かった。
 ゲーム本編でも名前が登場しているヒーロー番組「ヤキ肉マン」が登場し、しかも声の担当は以前出たCDシリーズ「M@STER LIVE」でも担当していた串田アキラ氏が続投(串田氏はアイマスの3周年記念ライブにも出演した経緯がある)。水瀬家の執事である新堂さんも、ドラマCDに続いて麦人氏が担当と、キャスティングにもかなりこだわっていることがわかる。
 さすがに以前のドラマCDで高槻家の兄弟が出演した際は、他の声優陣が掛け持ちで演じていたため、すべて別の声優さんとなっているが。
 そしてそのヤキ肉マンの番組に出演していたブンタ、アシゲ、モニョは、元々ネットラジオ「アイドルマスター Radio for You!」で、パーソナリティの3人が作った番組のマスコットキャラとして作られたもの。本来アシゲは「あしげちゃん」と呼ばれ、設定上は合体することもできるとされる(笑)。
 さらに言うと担当声優の「you-i」もまた、「Radio for You!」で、パーソナリティの3人が結成したユニットの名前である。
 他にも響が三輪車に乗っているシーンに映る自動車のナンバーが「足立841 く 00-72」になっていたり、高槻家の居間にののワさんの人形が置かれていたりと、いつも以上に小ネタ満載の話となっていた。
 個人的には浩三にミルクを飲ませた長介が、きちんと浩三にゲップをさせるために背中をポンポン叩いていたのが、親切と言うか優しい演出と言う感じで好感触。

 作画面ではやはりスーパーの描写を抜きには語れまい。

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 どんだけ背景を細かく描いてるんだろうか。別にスーパーが舞台の話ではないのだから、この場面ではそんなに凝らなくてもいいと思ってしまうのだが、その辺もまたスタッフのこだわりと言うところだろうか。
 人物の作画については、本分冒頭における「天使」を見ていただければすべて了解できることだろう。

 さて次回は。

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 念願のあずささん主役回になるのだろうか。真や美希といろいろ絡むようだが、さてさてどんな展開になるのだろう。
 髪の毛を切ったことについてはもう触れてくれないとは思うけど。
posted by 銀河満月 at 01:35| Comment(0) | TrackBack(11) | アニメ版アイドルマスター感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月18日

アニメ版アイドルマスター6話「先に進むという選択」感想

 今回はだいぶ更新が遅れてしまったので、いつもより簡単に。

 今話は前話のラストで新たに発足したユニット「竜宮小町」を軸に、サブタイどおりに「先に進むこと」を選択した人たちの様子が描かれた。
 具体的には竜宮小町の精力的な活動を目の当たりにして自らも奮起したプロデューサーと、原因は同じながらも違う理由で新たな一歩を踏み出すことになった美希である。
 ただ短い描写ではあったものの、長い綺麗な髪をバッサリと切ったあずささんもまた、「先に進むこと」を選択した人と見ることができるだろう。
 竜宮小町は伊織をリーダーとして、その両脇にあずささんと亜美が位置する関係にある。故にユニット全体のトータルバランスを優先したのと、「髪を切った方が若く見える」との助言?に従って髪を切ったわけだが、あくまで個人の理由は付随的なもので、周囲のことを第一に考えて髪を切ったことが、まずもってあずささんらしい選択だ。
 以前から「女が髪を切る」と言う行為は、例えば失恋した時に今までの思いを吹っ切るため、と言った感じで、何か人生の転機になるような重大事項に絡んで描かれることがあった。
 しかしかの「あずまんが大王」で、三年に進級した滝野智ちゃんが、単なるイメチェンで伸ばしていた髪を切った例を出すまでもなく、「重大な理由により髪を切る女」というものもまた、近年では記号的、と言うよりも陳腐な存在になってしまっている。具体的には「ほっかむりした泥棒」とか「山の手のザマスばばあ」と同レベルなわけ。
 そんな陳腐な記号をあえて導入せずに自然な流れで「髪を切る」という行為を盛り込んだのは、元々記号的でいて記号的でない部分を多く持つアイマスのアイドルたちにはふさわしい展開と言えるのかもしれない。

 プロデューサーは竜宮小町の活動を見て自らも奮起したものの、千早や貴音からもすぐにそれとわかるくらい、見事に空回ってしまう。
 自分がやらなければならない、と思いこんでいるからこその空回りではあるものの、同時にそんな自分のやり方に自信が持てていないということが、Aパートで小鳥や律子に対して消極的になり、自分の苦悩を正直に伝えられないところからも察せられる。
 結局さしたる成果を上げられないばかりでなく、ついにはダブルブッキングという失態まで犯してしまう。
 小鳥や美希の協力で最悪の事態は回避できたものの、重大なミスには違いないわけで、美希たちの元へ急ぐタクシーの中で、プロデューサーは1人「何やってんだ、俺…。」と独白する。
 奮起して今まで以上に努力してみたものの、結局状況を改善させることはできず、さらには手痛いミスまで犯し、その収拾をつけたのも小鳥や美希であって自分ではない。自分のやっていることは結局事態を悪い方向にしか導いていない。本人にはもちろんそんな気がまったくないからこそ、この独白は痛切だ。
 渋滞に巻き込まれて自分自身の力で移動することもできないというシチュエーションもまた、プロデューサーの焦燥感をより強く煽っている。
 そんな時、偶然ポケットから転がり落ちたのは、Aパートで春香からもらったキャラメル。
 プロデューサーの様子がいつもと違うことを察し、「甘いものは脳をリフレッシュさせるから」と、プロデューサーを気遣ってキャラメルを渡してくれた春香。
 イベント会場で「もっと私たちを信用してください」と言ったのも春香だったし、美希たちの元へ向かう一押しをしてくれたのは響だった。
 プロデューサーとアイドル、どちらか片方が頑張るだけでは成り立たない。互いが互いを信頼して頑張るからこそ、「アイドル」として完成することができるのだ。
 そしてそれは常に傍らにい続けるということでもない。プロデューサーがタクシーの窓から見上げた先には、抜けるような青い空があった。その同じ空の下で、春香と響はきちんとイベントの仕事をこなしている。
 例え離れていても、信頼し合った者同士は同じ空の下でつながることができるのだ。「the World is all one!!」の一節「空見上げ 手をつなごう この空は輝いてる」をまさに具現化したかのような名シーンと言えるだろう。
 それをわかったからこそ、キャラメルをもらった時には春香に感謝の言葉すら言えなかったプロデューサーが、雪歩からのお茶や春香からの手作りドーナツをもらった時、素直にお礼を述べるほどの余裕を得ることができ、尚且つ小鳥や律子に自分の決意をまっすぐ伝えることができたのだ。
 春香からの差し入れが円で構成されている「ドーナツ」というのも、「人と人のつながり」という今話のテーマを体現しているようで面白い。

 さてプロデューサーとは異なる理由で前に進むことを決めたのが美希だ。と言っても美希はトップアイドルを目指すと言うよりは、竜宮小町に入る、引いては「律子に認められる」と言うことの方に主眼を置いているようで、客観的にはようやくスターターが入ったという程度のところだろう。
 それでもダンスの振り付けを一度見ただけで覚え、ダンスに関しては美希よりも習練しているであろう真を驚かせるほど完璧に踊って見せたあたり、未完の天才ぶりが発揮されていた。
 ラストでテレビ初出演を果たした竜宮小町が新曲「SMOKY THRILL」を披露している際、竜宮小町へのぼんやりとした憧れを抱いていた程度の美希が、そのパフォーマンスを目の当たりにして、目指す意志をより明確にしていくシーンは、アニメならではの細やかな演出だったと言える。

 この「SMOKY THRILL」披露シーンでの各人の表情もまた細かくて、見ているだけで非常に楽しい。
 緊張の面持ちで見守る律子や伊織、少し不安げに見つめるあずささん、心の底から嬉しそうに微笑んでいるやよい、意外にもマイペースに、しかしいつものような茶化しを一切挟むことなく笑顔で見つめる亜美真美、自分の「成果」を真剣な眼差しで見つめる伊織を見て驚いた表情を見せる真など、各人の胸中までも想像できるかのような千差万別の表情が並んでいた。
 肝心のダンスシーンについてはもはや言うまでもないだろう。動きにも作画にもディフォルメを利かすことができるアニメの利点を最大限に生かし、全身の動きのタメ、髪の毛や衣装のなびき方、忙しく変わるアングル、ゲーム版とは異なるステージ演出など、まさに素晴らしいの一語に尽きる。
 営業やレッスンと言った地道な努力の先にこのステージシーンがある。それはゲーム版もアニメ版も同じと言うことだろうか。
 竜宮小町のテレビデビューを見届けたプロデューサーは、改めてこれからの道のりを「みんな」で進んでいくことを決意する。そしてEDとしてかかる「THE IDOLM@STER」。
 オールドファンなら言うまでもなく、この歌はアーケード版のEDテーマでもある。最後の最後に登場する社長の顔にかぶさるように表示された「NEXT STAGE」もそうだが、今までの物語はここで一旦区切りがつけられたということなのだろう。そしてアイドルたちもプロデューサーも、新たなステージへ進むことになる。恐れることなくその道をみんなで邁進していく、希望にあふれた良い区切りだったのではないだろうか。

 今回、個人的にポイント高かったのは小鳥さんだ。
 Aパートでプロデューサーは自分の悩みを小鳥さんに打ち明けることができなかったわけだが、Bパートで小鳥さんに謝罪した時、彼女はただ一言「大丈夫ですよ」と返すだけだった。
 ここから考えると、小鳥さんはそれこそ春香と同じくらいに最初からプロデューサーを信頼して疑わなかったのではないだろうか。逆にプロデューサーの苦悩を知った上で敢えて助言せず、自分で答えを導くことを待っていたではないか。
 あの笑顔とピースサインを見ると、ついぞそんなことまで考えてしまうわけなのである。
 逆に律子は「NO MAKE」を聞く限りでは、内心かなりいっぱいいっぱいになっていることが伺え、この状態でもし何か障害にぶつかってしまったら容易く折れてしまうのではないか、と思わされないこともない。
 なんだか白々しい書き方だけども、竜宮小町かそうでないかはともかく、いつか彼女らのうち誰かが障害にぶつかり、挫けてしまう日が来るのだろう。今話で多くのアイドルたちに支えられていることを知ったプロデューサーは、その時彼女らを支えることができるような存在になれているのだろうか。

 で、次回は全国7650万人のファンがいるとされる、やよいの主役回っぽい。「しゅーろくごー!」での説明を聞く限りは、かなり良い話になっているようなので、これもまたまた楽しみである。
posted by 銀河満月 at 00:50| Comment(0) | TrackBack(5) | アニメ版アイドルマスター感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月08日

アニメ版アイドルマスター5話「みんなとすごす夏休み」感想

 やべえ、ライダージェネレーションが予想をはるかに上回るほどに面白い。
 わが最愛の仮面ライダーことスカイライダーは、スカイサマーソルトで敵を空中に打ち上げてからの空中コンボが面白いように決まるので非常に楽しい。セイリングジャンプも併用すれば中ボス程度のキャラもあっという間に追い込める。
 超必殺技の三点ドロップを決める時は、スカイがジャンプする時につく独特の効果音がそのまま採用されていて、感動と嬉しさの余り目頭が熱くなってしまったよ(笑)。
 苦節数十年、やっとスカイライダーが優遇される時が来たのか。

 まあそんな前振りとは一切関係なく、アニメ版アイマスの話である。
 今話の内容はサブタイトルにもあるとおり「夏休み」。と言ってもアイドルの夏休みだから、夏休みと言うよりは骨休めと言ったところか。
 内容的にも各アイドルの描写を織り込みつつ特定アイドルを掘り下げるというスタイルを取っていた2〜4話からはいったん離れ、夏休みを満喫するアイドルたちの姿を活写するに留めている。

 …いや、「全力を傾注していた」と言うべきか(笑)。

 もちろんこの種の話にはお約束の水着シーンもあったのだけど、そればかりを描写しているわけではなく、うだるような暑さの事務所でだれる亜美真美たちから、目的地である海へ向かう一向、海でのそれぞれの遊び、旅館での思い思いのやり取りなど、劇中で春香が言っていた通り、「修学旅行」の様子を見せているかのような描写になっていた。
 Aパートの海水浴シーンの素晴らしさについては…、今更このブログで語る必要はないだろうな(笑)。既にいろいろな場所で素晴らしさが語られているだろうし、キャプチャした画像もバンバン張られてるだろうから、そちらを見れば十分なのではないかと。
 水着姿の綺麗さとか美しさってのは、言葉でいくら書いたって語りきれるもんじゃないしね。
 新曲「神SUMMER」がかかったと同時に、仰角カットで走り出す美希、響、真。カメラが動くにつれて亜美真美、最後に春香が走ってきてずっこける。そこまでのカットが1つにまとめられていたのは、躍動感があって非常に楽しい。
 殊に美希はいろんな所が遠慮なく揺れてて素晴らしかったね!
 あずささん、貴音の巨乳コンビを見て思わず名セリフ「くっ」を呟いてしまう千早や、相変わらずの健啖家ぶりを発揮する貴音、最初は気取っていたものの、すぐ亜美真美のペースに巻き込まれてしまう伊織、きちんと準備体操をする律儀なスク水着用(ここ重要)のやよい、ここぞとばかりに数え歌を歌いながら嬉しそうに砂浜に穴を掘る雪歩、保護者的役割を自覚して行動する律子とあずささんなど、各人の立場と性格が今回も短い時間に存分に描写されていたと言っていい。
 通常こんな水着姿の美少女ばかりに囲まれていたら、よほどの朴念仁でも下心がわきあがってきそうなものだが、そこは我らの分身ことプロデューサー。水着姿のアイドルたちに見とれることなく、海水浴場という人の多い場所に来ているにも関わらず、アイドルすなわち「有名人」であるはずの春香たちがまったく注目されないという現実に落ち込むという、誠に仕事熱心な一面を見せてくれた。
 今作はプロデューサーの扱いには非常に気を遣っていることが、1話の時点で容易に窺い知れるのだけども、「あるべきプロデューサーの姿」としては一番理想像に近いのではないだろうかと思える。
 やはりプロデューサーたるもの、いついかなる時でもプロデューサーとして行動しなければね。プロデュースしているアイドルに邪な感情を抱くなんてあってはならんことなのだ、本来は。

 海水浴が終わったら旅館に移動。女性陣が部屋に入った時の各々の描写が本当に修学旅行のそれを見ているようで楽しい。伊織がテレビのチャンネル数を確認したり、ハム蔵ギャグを見せるための前振りとは言え、「貴重品は既定の場所にしまう」ということにまで言及させるあたりは本当に芸コマだ。
 バーベキューのシーンでは肉を食べて心の底から喜んでいるやよいと、そんなやよいにもっと肉を食べるよう勧める真の姿が、本当の姉妹のように見えて微笑ましい。
 浜辺での花火の最中も含め、プロデューサー、あずささん、律子の年長組が完全に世話係になっている点も、年齢を考えれば当然ではあるのだが、アニメと言う媒体できちんと見られるというのはなかなか新鮮である。
 年長組3人だけが他のメンバーとは別に、プロデューサーの部屋に集まって飲み物を飲みあうというのも、世話係ならではというところか。
 入浴中の場面では近年よくある不自然な湯気とか光は一切使用されず、基本的に大事なところは一切画面上に見せないという演出がなされた。
 アイマスはそう言った性的な部分を露骨に見せて耳目を引くような作品ではないから、この見せ方は極めて妥当だろう。尤も個人的にはこんなところにまでシャルルを持ってきて一緒に入浴している伊織が一番気になったのだけど(笑)。

 そして就寝中の布団の中で春香と真は来年の今頃、自分たちがどうなっているのかを語らう。
 もしかしたらトップアイドルになっているかもしれないという、聊か楽観的な希望を話す2人に対し、起きていた伊織はプロデューサーが頼りないままではトップになるどころか事務所の存続も危ないと呟く。
 このあたりのやり取りはそれぞれが現実的かそうでないかを見せると言うより、3人がそれぞれ今のプロデューサーに対してどんな感情を抱いているかを見せているように思う。
 バーベキューの時、準備に専念していたプロデューサーに自ら肉を食べさせようとしていたように、春香はプロデューサーに対して比較的良い感情を抱いており、真は友達的な感覚、そして伊織は小馬鹿にしているそぶりを見せながらも内心では少しだけ期待している、そんな想いが感じられた。
 特に伊織のプロデューサーに対する冷静な意見と若干の温情は、2話での暴走やプロデューサーとのやり取りを経ているからこそのものと考えると、なかなかに感慨深いものがある。
 そしてそんな3人のやり取りを黙って聞いている千早というのも、結構意味深だ。

 千早に関しては以前より多少は丸くなったと思しき描写が今話では散見されるが、これはやはり4話での経験があったためだろう。
 前話のラストで千早が1人先に帰ってしまったのは、自分を変えることを拒んだからだと前話の感想で書いたのだけど、なんで拒んだのかと言えば、それは目の前に春香という存在がいたからではないかと、個人的には思っている。
 自分がプロデューサーや春香たちに迷惑をかけたということは、千早自身がよくわかっていることだが、にもかかわらず春香はそれを最初から迷惑と受け取らず、逆に千早と一緒に料理が作れて楽しかったと素直な気持ちを伝えてきた。
 自らを変えることでようやく協調性を学んだ千早と、生来の気質から協調性を持ち合わせていた春香、この落差に少しばかりの戸惑いを感じたのではないかと思うのだ。
 そのへんを努力しなければ改善できない千早にとって、春香はかなり眩しい存在に見えたのではないだろうか。自分を変えていけると気付いたからこそ、その直後に元から協調性を持つ春香の優しさを目の当たりにして戸惑ってしまった。だからこそあの時は一緒に行動することを避けたように思える。
 で、少し時間が経って戸惑いが無くなったのが今話での千早ではないかと思うわけ。相変わらず春香以外とは積極的にかかわらないものの、プロデューサーにわざわざ飲み物を運んでいくあたりにその変化は見てとれるだろう。
 (さらに言えばその飲み物をビニール袋に入れたまま、プロデューサーに選ばせるという無骨なやり方が、いかにも千早らしいと言える。)
 そんな千早が変わっていく自分たちに思いをはせる春香たちの会話を耳を澄ませて聞いていた。もちろん表情には出ていないものの、以前よりは色々思うところがあったのではないかと思わせられる。

 そしてそれは春香たちも同様だ。春香はここでも「今よりも有名になったら、みんなと遊びに来るようなことはできなくなるのかも」と、自身の素直な気持ちを吐露する。
 それは単に今日という日を懐かしんだだけかもしれないし、変わっていったり変えていったりすることに対する戸惑いもあるかもしれない。みんなと今までのように行動することができないかもと言う寂しさや不安から来たということもあり得る。
 だが彼女たちはもう既に歩み始めていて、誰もそれを止めようとは思っていない。それでいて彼女たちの目指す到達点は1つではない。1話で描かれた通り、彼女たちが理想とする「アイドル」はそれぞれ異なっており、誰一人として同じものはなかった。「アイドル」を目指しながらも、最終的になるべき「アイドル」は各人異なる。同じであり違うものを全員で目指して進んでいるのだ。
 そう言う意味ではみんな一緒に同じ道を安穏と進んでいくことはできないだろう。だからこそ逆に互いを助け合うことができるはずなのだ。到達点は違っても「アイドルになる」というそれぞれの夢は同じなのだから。
 それは春香の不安感を簡潔な言葉でフォローした伊織の描写に集約されている。

 そして事務所に帰ってくるや否や、社長から告知される新ユニット「竜宮小町」の始動。
 原作たる「アイドルマスター2」では色々と物議を醸したこのユニットだが、アニメでははたしてどのような立ち回りを演じることになるのか、そしてそれによって残りの9人とプロデューサーはどのように考え、行動するか。
 息抜き回かと思いきやこんなサプライズを用意してくれるとは、やはりアニマスのスタッフ陣は侮れない。
 次回が否が応でも楽しみになってしまうではないか。
posted by 銀河満月 at 00:57| Comment(0) | TrackBack(4) | アニメ版アイドルマスター感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする